はじめに
年俸制を導入されている企業で注意すべき点をまとめております。
残業代
年俸制を導入していても、労働基準法41条の適用除外者(管理監督者など)以外であれば残業代を支払う必要があります。
(平成12.3.8 基収第78号)
賞与と残業代
例えば、年俸を17分割して、2.5ヶ月分を賞与と称して夏と冬に支給される場合があります。この場合でも、賞与を残業代を算定する基礎となる賃金に含める必要があります。すなわち年俸額を12ヶ月で割った額に対して法定額以上の割増割増賃金を支払う必要があります。
(平成12.3.8 基収第78号)
そもそも「賞与」とは支給額が予め確定されていないものをいい、年俸の2.5/17の額というように支給額が確定されているものは「賞与」とはみなされません。
(昭22.9.3 基発第17号)
賞与の支給日在籍条項の有効性
賞与では、良く就業規則等で「支給日在籍条項」が規定されております。これは、賞与の支給日に会社に在籍している必要があり、支給日の前に退職した従業員に対しては支給しなないというものです。これは一般的に有効であると解されております。
(大和銀行事件 昭和57.10.7 最高裁第一小法廷)
では、年俸制を採用している場合にも、この「支給日在籍条項」が有効であるかどうかという点についてですが、これに対して明確な判例や通達は今の所存在しません。
ただ、年俸制の場合で賞与が年俸を18分割した6ヶ月分であるといった場合、支給額が明確であるため、労働基準法24条に規定されている賃金であるとの解釈されます。この為、「賞与」との解釈自体が成立しませんので、「支給日在籍条項」は無効となり、日々の労務提供によ発生した賃金は請求に応じて支払う義務があると解されます。
退職時の差額支給
q上記「支給日在籍条項」でも記載しております通り、年俸制の場合「賞与」との扱いがなされません。この為、年度途中の退職者が出た場合、年俸を退職月までの月数で按分した額を支払う必要があります。以下の例をご参照下さい。
【例】
@年収1,800万円
A6月と12月に賞与として年俸の18分の3を受け取る。
この会社の従業員が11月末日で退職した場合ですが、8ヶ月働いて年俸の18分の11を受け取っています。すなわち1,100万円を受け取っていることになります。ただ、年俸制の場合、賞与を給与とする考えで行けば、本来12分の8、すなわち1,200円を受け取る権利があると言えます。
従って、会社は差額の100万円を支給すべきと考えられます。
月 |
支給額 |
4月 |
賃金(月給)支給 年俸の18分の一 |
5月 |
賃金(月給)支給 年俸の18分の一 |
6月 |
賃金(月給)支給 年俸の18分の一
賞与支給 年俸の18分の三 |
7月 |
賃金(月給)支給 年俸の18分の一 |
8月 |
賃金(月給)支給 年俸の18分の一 |
9月 |
賃金(月給)支給 年俸の18分の一 |
10月 |
賃金(月給)支給 年俸の18分の一 |
11月 |
賃金(月給)支給 年俸の18分の一
月末退職 |
12月 |
- |
1月 |
- |
2月 |
- |
3月 |
- |
※賃金とは、労働基準法24条規定の毎月払いの給料の指します。