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吉田人事労務管理事務所は、人事と労務管理に特化した社会保険労務士事務所です。

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採用自由の原則Principle of adopted freedo

概要

従業員の採用は原則、経営者の自由に行なうことができます。雇用後(自社の従業員)への差別の禁止事項の多さに、比べると自由度は大きくなっています。
例えば国籍で採用可否を決めても問題ありません。ただし、採用後に国籍で差別をしてはいけません。このように、採用前後で同じ従業員に対しての差別的な取扱の禁止事項が異なりますので注意が必要です。

もちろん、採用時にも差別してはいけない項目があります。ここでは、採用の自由度と差別禁止などの制限事項とを解説致します。

採用の裁量範囲

採用に関しては、原則自由に行うことができます。これは、採用というのは会社の経営に取ってとても重要要素であり、また会社と従業員との間の「労働契約」の問題であり、どのような契約を結ぶかは当事者間に委ねられているからです(契約自由の原則)。

なお、会社に許されている採用時の自由度として下記があります。

 自由にできる項目 内容 
採用人数 採用人数を自由に決めることができます。 
 募集方法
 募集方法を自由に決めることができます。縁故等による採用を行うことも問題ありません。
 採用基準 自由に採用基準を定めることができます。 
 契約内容 労働者と締結する労働契約(雇用契約)の内容を自由に決めることができます。ただし、法律に別段の定めがある場合を除きます。これは憲法の経済活動の自由(22条、29条)等に根拠を持つものです。 
 調査 採用する際の応募者に関する調査の自由が認められている。これは三菱樹脂事件(最大判昭和48年12月12日)によるものであるが、現在の社会通念では個人情報保護法等の関連もあり、一定の制限があるとみるべきだと思われます。 

採用時の制限事項(差別禁止事項)

会社が従業員を採用する際には、差別などを禁止されている事項があります。例えば男女差別の禁止があります。これは、飲食店の店員を募集する際などに、「22歳までの女性」などと記載した募集は違法となりますので、注意が必要です。

また、採用時の差別ではありませんが、派遣で来てもらっている方が3年を超えた場合は、今後は派遣ではなく正社員として働いてもらえるように(自社で直接雇用するように)申入れる必要があります。これは派遣を受け入れている会社への法的な義務になりますので、必ず直接雇用の申入れをする必要があります。

このように、従業員を採用する際には、様々な制限事項がありますので、以下に列記しました。下記項目は採用時に会社が守らなければならない項目となります。
簡単な解説を入れておりますので、概要は掴んで頂けると思います。詳細はお問合せ下さい。

項目 内容 
 性別差別の禁止 性別を理由とする差別は禁止されております。これは、採用時の面接において、「子供が生まれたらどうしますか?」などの男性には聞かない質問をすることも違法行為となります。
ただし、法第8条に規定さております通り、女性が著しく少ない職場において、その是正を目的として女性を優位に採用することは禁止されておりません。(逆の場合の男性優位は禁止されております)

【法令】
男女雇用機会均等法 第5条
身長、体重又は体力
総合職の転勤要件
 これらは男女雇用機会均等法で定められている関節差別に該当するものですが、合理的な理由がない限り差別的な取扱となり禁止されています。
例えば、重い荷物を運搬する業務などのように身体的な要件が必要な場合は問題ありません。

【法令】
男女雇用機会均等法 第7条


【参考リンク】
間接差別の禁止(第7条) - 厚生労働省
厚生労働省令
年齢差別の禁止 厚生労働省令で定める場合を除いて年齢による制限をかけることはできません。例えば25歳以下の方のみ、などの募集は年齢差別となり違法となります。

【法令】
雇用対策法 第10条
高年齢雇用安定法 第18条の2
障害者雇用の義務 会社は一定の割合で障害者を雇用することを義務付けられています。現在は、障害者雇用率が2.0%以上である必要があります。即ち、50人以上の従業員がいる会社は最低1名の障害者を雇用する義務が生じます。従業員が100名の会社であれば最低2名の障害者を雇用されていることになります。今一度自社の雇用状態をご確認下さい。

【法令】
障害者雇用促進法 第37条
障害者雇用促進法 第43条

【参考リンク】
厚生労働省障害者雇用制度
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/shougaisha/04.html

 組合活動 労働組合からの脱退を条件に採用することや、採用後に労働組合に加入しないことを条件として採用することは禁止されております。

【法令】
労組法 第7条1項
派遣社員の正社員登用 政令で定める26業種以外の業種の派遣社員を3年を超えて受け入れた場合は、その派遣社員の方に、派遣ではなく正社員として働いてもらえるように、自社で直接雇用することを申出る必要があります。
ただし、部署の異動をすれば3年を超えても派遣で受け入れることができる、などの例外はあります。

【法令】
派遣法 第40条の2、3、4、5、6
パート社員の正社員転用  パート社員がいる会社では、新たに正社員の募集を開始する際には、働いているパート社員に対して、下記のいずれかをおこなう必要があります。
@求人情報の周知
A社内公募機会の付与
B正社員転用試験

【法令】
パートタイム労働法 第13条
 高齢者の雇用継続  60歳を超えても本人が希望する場合は、65歳まで雇用を継続する必要があります。これは定年延長とは異なります。巷では「65歳まで定年延長する必要がある」などと言われることがありますが、これは間違いです。

【法令】
高年齢者雇用安定法 第9条

【参考リンク】
高年齢者雇用安定法の改正〜「継続雇用制度」の対象者を労使協定で限定できる仕組みの廃止〜(厚生労働省)

 有期雇用契約社員の無期雇用契約への転換 こちらはも一種の「採用時の制限」となります。有期雇用で5年を経過した場合に、その従業員から無期雇用契約の申入れがあった場合は、会社は無期雇用契約に変更しなければなりません。この転換を拒むことはできませんので、注意が必要です。

一部例外も認められており、例えば、大学講師や60歳を超えている方などは、例外的に5年を超えて有期雇用できます。この場合は、「計画認定」とうものを都道府県労働局から得る必要があります。少し複雑な話になりますので、詳しくはお問合せ下さい。

【法令】
労働契約法 第18条

憲法との関係

憲法19条(思想・良心の自由)および14条(法の下の平等)は、国または公共団体と個人との関係を規律するものであり、民間企業と採用希望者といった私人相互の関係を直接規律することを予定するものではないと言われております。(三菱樹脂事件 昭和48年12月12日 最高裁判所大法廷)

採用は企業の経営にとって大変重要なもので、人財の良し悪しで企業価値が決まると言っても過言ではないと思います。しかし、ここで見てきたように様々な制約がありますので、これらの制約をうまく利用して、良い人財の採用から企業の発展を目指したいものです。

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