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職種限定社員と地域限定社員HEADLINE

概要

転勤や職種を限定しないいわゆる普通の正社員と違い、働く職種や地域を限定している職種限定社員と地域限定社員というのがあります。

今回は、この職種限定社員と地域限定社員が、限定職務につけなくなった場合の対応について述べます。

業務ができなくなった場合

職種限定社員の場合、病気や怪我などで、採用時に限定した職務が遂行できなるなる場合があります。例えば、タクシーの運転手という職種限定社員として採用した場合を考えてみます。何年間かタクシーに乗務していましたが、ある日死傷病で目が悪くなり、タクシーの運転ができなくなったとします。この場合は、採用時の職種ができなくなっていますから、原則的には解雇ということになります。

地域限定社員の場合は、勤務していた支店が統廃合されて、限定していた地域内に仕事場がなくなった場合などが該当します。この様な場合は、他の地域に転勤することなく、限定されていた地域で仕事がなくなった時点で解雇となります。

ただ、長く勤務してもらっている場合など会社が従業員の生活面に配慮して解雇を回避する為の措置を取ろうとする場合があります。例えば、タクシー運転手という職種限定社員で採用したにも関わらず、事務職などへの職種変更を、会社から提案することもあります。

こうすることで、解雇せずに雇用を維持することができますが、この場合は次節の注意点(リスク要因)を十分検討する必要があります。

職種変更、地域変更する際の注意点

採用時の職種の業務ができなくなった場合に解雇せずに、職種変更した場合は、その時点で職種限定社員と扱えなくなってしまいます

一般従業員と同じ扱いなってしまうということは、職種変更した先でうまくいかなければ、また職種変更する必要が出てきます。要するに「採用時に契約した職種ができなくなったので解雇します」とは、言えなくなってしまうのです。

例えばタクシー運転手から事務職へ職種変更した時点で職種限定社員ではありませんので、事務職が上手くできなくても、解雇もできないという事態に陥ります。このことを十分注意して下さい。


そもそも職種限定社員が、良い意味で仕事に誇りを持たれている方も多数います。例えば、25歳で職種限定社員として採用すれば、その職種一筋で仕事に邁進して20年間たっても、まだ45歳です。45歳といえば、後20年近く働くことができ、体力的にも気力的も充実しており、会社でも中心的なポジションにいます。この方が事故や病気で職種限定の仕事ができなくなると、いきなり事務職などの他の職種に変わって仕事を続けるというのは難しい場合があります。ご本人も辛いですし、馴染めない可能性も十分あります。結果的に様々な部署へ異動を繰返し、会社も本人も疲弊してしまうことがあります。

職種限定社員とは、特定の職種を行うことを前提に採用しているものです。当然、採用時に契約した職種以外を行わせることはできません。健康で仕事ができる間は、本人も当然拒否するでしょう。

問題は、病気や怪我で本来の職種ができなくなった場合です。本人も生活がありますから、解雇は望まない事があります。だからといって事務職への異動も難しい、という場合が問題です。

この問題に対して、画一的な答えや解決策があるわけではありません。あくまでケース・バイ・ケースでの対応となります。就業規則や労働契約で、限定職種ができなくなった時点で解雇とあれば当然そうなるのですが、会社も本人も解雇を望まない場合は、十分に話し合って、今後の対応を決める必要があります。


繰返しになりますが、通常の採用であれば、開発職から営業職に職種変更することは当たり前のように行われています。開発職ができなくなったからという理由で解雇することは、よほど合理的な理由がない限り無理でしょう。この為、開発部門の縮小などがあれば、事務部門や営業部門に配置換えになり雇用は維持されるのが当然となります。

この点が、職種(地域)限定社員と一般の従業員との大きな違いとなります。

本人希望と労災の関係

例えば、トラックの運転手やアナウンサー職などは、運転やアナウンスそのものはできても、それに付随する業務ができなくなり、結局、他の職種(例えば事務職など)に変更せざるを得ない場合があります。ただし、長くやればやるほど仕事に愛着がわきますから、他の職種に移るのを本人が強く拒む場合があります。

往々にして、職種限定社員の給料は、その職種故に一般の従業員の方よりも高額になっていることもあります。この為、一般の事務職などに移ると給料も減額になってしまう事も多いです。これが職種変更を拒む理由の一つでもあります。

ただし、本来できない仕事を本人の強い希望だから、という理由でやらせていた場合でも、業務上の事故があれば、当然、会社は労災申請しなければなりません。会社の責任が問われることになります。また、労災による休職期間中は解雇することができません。これも会社にとってのリスク要因となります。

安全配慮義務

また、本来できない仕事を本人に強い希望だから、という理由れやらせていても、会社の安全配慮義務が免除されることはありません。本人は事故にあっても自分で望んだことだから、とい言われるかも知れませんが、ご家族に訴えられることもあります。

この場合、会社は、本人が強く望んだことであるが、「本来できない業務である」とうことを認識していた、ということですから、会社としての安全配慮義務を果たしていなかったということになり、ご家族から損害賠償などを請求される可能性もあります。

就業規則と労働契約

ここで、もし本人から、「私が強く望んで無理やりトラックの運転手をさせてもらっており、何か問題があっても会社には一切迷惑をかけないし、会社には責任がない」といった一筆(誓約書)を書いてもらっていたらどうでしょうか。これも意味がありません。本人が十分理解して自由意志で書いたものであっても、事故が起きれば労災になりますし、会社の安全配慮義務違反は問われることになります。

限定社員として採用する場合は、入社時の労働契約(雇用契約)締結時に、きちんと、職種限定社員なのか地域限定社員なのかを明示しておく必要があります。これが不明確ば場合は、本人が職種限定社員として採用されているつもりで働いていたが、会社は一般従業員として雇用していた場合にトラブルが発生することがあります(日本テレビ放送網事件、九州朝日放送事件)。

また、職種(地域)限定社員を一般従業員へ変更する可能性がある場合は、変更後の労働条件などを定めた就業規則を別途作成しておくのも一法です。

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