パワハラの具体例（類型） - 吉田労務管理事務所

パワハラ類型（具体例）Specific examples of power harassment

パワハラ類型

こちらの記事にも書いておりますが、法的にパワハラを定義するものがありません。では、何をパワハラとするのかは難しい問題になってきます。そこで、平成24年に厚生労働省が出した「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」の報告書及び、平成26年度に厚生労働省が実施した「サポートガイド策定に向けた調査研究」の結果を引用しながらパワハラ行為の類型（具体例）を見ていきます。

パワハラの行為類型

パワハラの定義は法律にはありませんが、厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」の報告書では、以下の類型が示されています。

行為類型	内容
１．身体的な攻撃	暴行・障害
２．精神的な攻撃	脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言
３．人間関係からの切離し	隔離・仲間外し・無視
４．過大な要求	業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強要、仕事の妨害
５．過小な要求	業務上の合理性がなく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じる、仕事を与えない
６．個の侵害	私的なことに過度に立ち入る

パワハラ行為の具体例（実例）

厚生労働省が「サポートガイド策定に向けた調査研究」で、パワハラに関するアンケートをとりました。このアンケートの結果で、実際に従業員が「パワハラ」だと感じた言動を以下にご紹介します。アンケート結果をそのまま掲載しておりますので、実際にパワハラと認定されたものではありませんのでご注意下さい。ただ、アンケート結果を読んでみると、よくあるものもあれば、子供以下と感じるような幼稚なものまであります。実際に大人の職場で、このような行動が見られることが日本の経済的な競争力を低下させる原因になっています。

１．身体的な攻撃

①本で頭を叩かれた。
②蹴られたり、ファイル（硬いもの）で殴られたりした。
③エレベーターに最後に乗り込もうとしたら、わざと「閉」ボタンから手を離されて、ドアに挟まれた。
④自身の意に反した行動に気を悪くし、故意に寝台を動かし、作業中の当方の足に寝台をぶつけ、（むこうずねに）青あざをつくった。

２．精神的な攻撃

①業務上の注意をされる時に、人格否定と感じる言い回しをされる。
②他社員の前での必要以上の叱責
③上司からの執拗な叱責や不当な扱い。
④机をたたく、椅子をける等の威圧。
⑤どこの職場からも必要とされていないと言われた。今まで頑張っていないからその程度の評価しかない、降格になっても仕方がない、

３．人間関係からの切り離し

①話しかけても返事をしない。目を合わさない。連絡事項や指示を他のメンバーを介してする。人の意見に耳をかさない。
②上司から無視されて、仕事から外された。「やめさせてやる」と言われた。
③情報共有をしない。必要な情報をわざと黙っている。
④言ってもいない事を「あの人があんな事言ってたわよ」と周りの社員の触れ回り、職場の人間関係を悪化させる。
⑤先に配属になっている方からは口も開かずに無視されている。自分との席の間にフェンスが作られている。何も話しかけるなとのオーラが出ており、業務上のことでも聞くことができない。

４．過大な要求

①休暇中であるにもかかわらず連絡が入り、業務を命令された。休日関係なく業務命令。
②不必要な残業を強いられた。
③明らかに、残業しないと遂行できない業務を残業せずに行なえと無理を強いられる（サービス残業の強要）
④新入社員に対する叱責や異動、転職をすすめると等を私から伝える旨を指示された。
⑤私用の買物（お菓子）、車での送り、印鑑の準備等。できていないと、気が利かないと言われる。

５．過小な要求

①契約内容にはない雑務（お茶くみ・お菓子配り・シュレッダーなど）を依頼される。派遣社員は雑用係と思っている方がいる。
②それまで任されていた仕事を取り上げられ、一番その業務に対して知識があるにもかかわらず、業務遂行にあたり意見を一切求められなくなった。何か確認が必要な場合は、部下（＝私の後輩）を使って尋ねてきた。
②他の業務をしているのに、「暇でしょ、郵便を出してきて」と言われる。
③翌日分の休みが足りないことを伝えるたところ、「あなたはどうでもいい。好きなところで休んで」と言われた。
④残業が多すぎるとの理由で、不当に担当業務を減らされ他の課員が残業する中、ひとり定時で帰らされた。

６．個の侵害

①学歴について言われる。結婚しないのかと言われる。
②業務後の懇親会（飲み会）への過度な参加強要、休日の会社行事への参加強要。
④実家に帰るたびに、お土産を買ってこいと言われる。病気になったときに病名や原因をしつこく聞いてきて、それを言いふらす。年賀状の強要。
⑤休暇に関して、「旅行のキャンセルをしてもらうかも」と無用な心配をしなくてはならないことを言われた。
⑥大勢の前で服装や見た目の事を悪く言われる。

７．その他

①個室に呼ばれ、「あなたの業務は派遣社員でいいので、転職活動して下さい」と告げられた。
②良いことは全て自分の手柄として報告、悪いことは全て部下のせいとして報告。
③定時で帰れない雰囲気を作られた。
④いちいち言葉使いをチェックする。
⑤全くの畑違いの部署に異動させられ、全く仕事をすることができなかった。
⑥差別等、好きな人としか会話がない。
⑦上司が、（上司自身にとって）面倒な仕事を押し付けてくる。

パワハラとは何か！簡単に考えてみる

今まで多くのご相談を受けてきましたが、パワハラはやはり上司の性格に起因する部分が大きいと感じております。（逆パワハラもそういう意味では部下の性格に起因することが多いと思います）
2015年12月から、法律でストレスチェック制度がスタートしました。これは、各従業員にアンケートをなどを取って、仕事上のストレスを評価する制度です。今までは各企業が独自に行っていたメンタルヘルス対策ですが、国が義務化したことで、悪い結果が出た場合、そのまま放置しにくくなります。鬱病などの労災認定が出た場合、会社は高ストレスであることが事前に分かっていたのに何も手を打たなかったことが問題になる可能性があるからです。
職場内でのコミュニケーションを阻害して収益の悪化にダイレクトに繋がるパワハラ行為をなくすために、会社としても管理者研修やメンタルヘルス対策など、今後も引続き職場環境の改善活動を行っていく必要があります。

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