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管理監督者と管理職Managers and supervisors


管理職って課長から...!?

管理監督者と管理職 本日は管理職についての記事です。管理職って何でしょうか!?

多くの会社では課長になったら管理職、とった感じで出世されていると思います。ようやく課長になって管理職、いよいよ、組合からも抜けて、残業代もなくなる、いつでもクビにされる、など色々な事が言われています。


実は、この管理職については、とても誤解が多いので、きちんと解説していきます。
まず、管理職には、下記の2種類があります。

 種類 概要 
 法律上の管理監督者  これは、労働基準法で決められている管理監督者に該当するもので、労働時間、休憩、休日の規定が適用されません。詳しくは後述します。
 2 企業が独自に決めている管理職   こちらは、労働基準法で決められている管理監督者に該当しませんが、企業が独自に管理職と決めているものです。法律上の管理監督者に該当しませんので、当然残業代も出す必要がありますし、休日出勤すれば、割増賃金を支払う必要があります。

裁判でよく問題になるのが上記2種類のどちらに該当するか、ということです。例えば、一般的な企業の場合、課長になったら管理監督者(上記No.1)に該当しますが、中小企業の場合は、部下の数、年収、裁量権の範囲などから、管理監督者と認められない事も多々あります(No.2)。
この場合でも肩書や職務内容は「課長」や「部長」で何ら問題ありません。ただし、法律上の管理監督者に該当しませんので、残業代や休日出勤手当などはきちんと支給する必要があります。

いわゆるブラック企業で、よくあるのがパートさんが10人位いて、正社員が自分一、入社1年で「今日から課長だから」と言われ、残業代も出ない、休日出勤は当たり前、給料は管理職手当が1万円付いただけ、というのがあります。典型的なブラック企業ですが、このような場合は原則法律上の管理監督者に該当しません。注意して下さい。

また、「入社半年で係長昇進もあり」などと記載のある企業もありますが、このような場合も注意が必要です。入社半年足らずで係長になり、管理職になったので残業代も出ません、休日もありません、となると本人は疲弊して倒れてしまうかも知れません。

このように、形だけの管理職というのは法律上は、いわゆる役職の付かない「一般従業員」と同じ扱いになりますので、注意して下さい。

では、ここから、正常な会社の管理職、即ち法律上の管理監督者とは何か、を見ていきます。該当者は概ね大企業の課長職以上だと思って頂ければよいでしょう。

誤解を避けるため、以下の文章では法律上の管理職であることを明確にする為、「管理監督者」と記載します。


管理監督者と一般従業員の違い

違う点は下記3点だけです。3点だけといっても、一覧にしてみると影響範囲が大きな項目が並びます。ただし、この3以外は、一般従業員と全く同じです。

管理職になると違う点 概要 
 1  労働時間の拘束がない  1日8時間、週40時間の縛りがなくなるので、何時間働いても良いです。そもそも労働時間の概念が適用されませんがら、結果的に残業代が不要になっています。

残業時間の詳細はこちら
 2 休憩時間を与える必要がない   実は、1日8時間を超えて働く場合は、1時間の休憩を与える必要があります。この休憩時間が不要になります。簡単に言えば、管理職の方は、昼休みに仕事をしてもOK、ということになります。

休憩時間についての詳細はこちら
 3 休日を与える必要がない   これは、週休制の会社の場合は1週間に1日休日を与える必要があります。この為、連続出勤可能な日数は13日なります。しかし管理職の場合は連続勤務1ヶ月、といったことをしても問題ありません(違法にはなりません)

※管理職にも労災は当然適用されますので、労災事故に該当するような長時間労働になるようでは問題があるでしょう。

現実の会社組織の中では、
経営者
管理職
一般従業員

のような階層構造で、まるで課長になると全てが違う様に見えるかも知れませんが、労働時間、休憩、休日の規定が適用されなくなるだけで、あとは全て同じです。

ただ、上記表のように書くと管理職になると過労死してしまいそうですが、現実時にはそうならない仕組みになっています。

それは、「仕事に対する裁量権」が大きくなることです。


管理監督者の裁量権

管理監督者には仕事に対する裁量権があり、出退勤の自由が認められています。要するに朝8時に出勤して夕方17時まで在社する必要はありません。9時過ぎにフラッと来て16頃に帰宅してもかまいまっせんし、仕事の合間に私用を済ませても問題ありません。

よく昔「重役出勤」という言葉がありましたが、管理監督者になると、出退勤に時間は自由にできます。ちなみに一般的に言われている「裁量労働制」とは本質的に異なりますので、注意して下さい。

また、仕事の裁量も大きくなり、自分の意志で様々な事が決められる様になります。仕事のスケジュールや成果物などもある程度自由に決めて部下に指示をすることができます。

このように、部下に(ある程度)自由に指示を出すことにより仕事を進めていけますので、「自分のペース」というものが比較的取りやすくなります。

この辺りもストレスの緩和、過労の防止に役立っています。


管理監督者も労災適用

管理監督者になっても当然過労による労災も適用されます。例えば、残業時間という概念はありませんが、労働時間の把握は企業にとって必要な事項になります。

よく、「課長になったから勤怠はつけなくてもよい」という話を聞きますが、これは間違いです。会社は、一般の従業員同様、管理監督者の労働時間もきちんと把握する義務があります。

これは、心筋梗塞や脳梗塞、精神障害などの労災認定において残業時間が規準の一つとされているからです。


管理監督者の定義を法的に少し詳しく

先ほども出てきましたが、管理監督者とは、労働基準法41条第2号でで規定されている「監督若しくは管理の地位にある者」を指します。これは、監督者又は管理者ということであり、実は「監督者であり、かつ管理者」であることを必要としません。

法41条第2号に定める「監督若しくは管理の地位にある者」とは、一般に部長、工場長等の労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意味であり、名称にとらわれずに実態に即して判断されます。

管理監督者となれば、残業代を支払う必要はありません。ただし、深夜残業代(午後10時から午前5時までの間の残業代)は支払う必要があります。この場合でも、管理監督者に該当する労働者の所定賃金が労働協約、就業規則その他によって一定額の深夜残業代(深夜割増賃金)を含める趣旨で定められていることが明らかな場合には、その額の限度では当該労働者に深夜残業代(深夜割増賃金)を支払う必要はありません。
これは、行政解釈及び判例で示されております。
(S63.3.14 基発150号)
(H21.12.21 最2小判 ことぶき事件)


また、大企業では、課付や部付の管理職の方がいらっしゃいます。大企業の場合は、従業員の数が多いのですが、ポストはそれほど多くはありません。この為、職能給を採用されている企業が多いのですが、この場合課長職と同じ職位であり、給与なども同水準だがライン長ではない方がいらっしゃいます。このような方も法的には管理監督者という扱いにできます。下記の通達をご参照下さい。

 ■スタッフ職
大企業で見られる、部付きの専門職などの部下のいない部長待遇者なども管理監督者として取り扱うことができます。
(昭和63年.3.14 基発第150号)


なお、前半でも記載しましたが、労働基準法41条第2号に定める「監督若しくは管理の地位にある者」に該当しなくても、会社の基準で、いわゆる管理者として課長や部長を配置することは問題ありません。ただし、この場合は当然、法定の残業代を支給する必要があります。

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参考条文

 (労働時間等に関する規定の適用除外)
第四十一条  この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
一  別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者
二  事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
三  監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

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